1991年の夏。クワウンナイ沢を遡行してトムラウシに登った。そしてさらに大雪山まで縦走したが、なんといってもクワウンナイ沢がすばらしかった。


1991/8/11
標高 2141m
 クワウンナイ沢を行く


クワウンナイ沢という沢がある。
この沢のすばらしさは滝の瀬十三丁と呼ばれる
2km以上続く滑滝にある。「日本で最も美しい沢」と絶賛されたというがまったくそのとおりだった。
夏休みは、この沢を遡ってトムラウシに登り、そこから大雪山まで縦走するという計画を立てた。
幌尻岳に登ったとき沢登りをして、ひどいめにあったのだが、妙に心に残った山行で、装備を完全にしてもう一度、沢にチャレンジしてみたくなったのだ。
このために、沢登りの足回りにはかかせないという「わらじ」を買いにいったが、店先で「ウェンディングシューズ」という靴があるのを知った。ズックのような靴の底にフェルトを貼り付けたものである。
この他に脛あてと、伸縮できるストックを購入した。こうして勇躍、クワウンナイ沢遡行に出発した。
ところが、寝過ごしてしまった。朝、3時くらいに釧路を出る予定が6時過ぎになってしまった。


810

旭川から天人峡に向かい、そして登山口に着く。
ここで車を置いて、歩き始める。帰りはJRとバスを乗り継いで、ここまで戻ってくるつもりである。
出発は12時頃になってしまった。
キャンプ指定地までは6時間以上かかる。
シェルター型のテントを持ってきているので、適当なところで野営してもいいと、タカをくくっての出発であった。
歩き始めてすぐにボンクワウンナイ沢出会いに出て、すぐに靴を履き替える。
徒渉の連続である。
沢を遡って行き、5時を過ぎてそろそろテントを張ろうかと思っていた頃に、登山道脇のわずかなスペースにテントが張られているのを見つけた。仲間がいると喜んだのだが、これがもぬけの空で、人の気配がしない。
なんか、薄気味悪い。想像したのは熊のことである。
沢筋のこんなところにテントを張って、ヒグマが出てきたらどうしようか。もしかしたらこのテントは、そんなことがあって、逃げ出して放置されたテントかもしれない。
ガイドブックに記載されている幕営地まで行くことにした。
沢を徒渉しながら登って行くと、上のほうから煙が流れてくる。幕営地で焚き火をしているらしい。
人がいる、と思ったら心強くなった。
しかし、時間はもう既に6時をまわって、沢筋は次第に暗くなってくる。
7時を過ぎると、あたりは真っ暗になった。気持ちはあせるのだが、なかなか幕営地には着かない。
暗い中で沢の徒渉を繰り返すのは、けっこう危険である。それでも進むしかない。
私は、こうしたときはできるだけヘッドライトは使わない。不明瞭な道を歩いているときにライトの光に頼ると、その範囲しか見ることができなくて、道を失うことが多いのだ。
人の目というのはうまくできていて、けっこう夜目に慣れてくるものである。
空のほのかな明るさだけで、道の感じをある程度つかむことができる。ただ、徒渉する時だけは水の底がどうなっているか見えないので、ヘッドライトをつける。
ともかく、こうして危うい遡行続けて、ようやくの思いでキャンプ指定地にたどりついた。
さすがに「助かった」と思った。
時間は8時少し前であった。
このとき、テントがいくつか張られていたのだが、その明かりが異様にまぶしく感じた。それだけ、真っ暗な中を歩き続けていたのだ。挨拶をしたら、「今着いたのですか」とビックリしていた。

811

テントを張ったのところはカウン沢出合である。今日はトムラウシに登って、ヒサゴ沼の小屋まで行くつもりある。
出発したのは6時頃。
30分ほど歩くと沢が大きな滝となっているのにぶつかる。これが岩魚止ノ滝である。
昨日の疲れが残っているのか、なかなかペースがつかめない。滝の前で大休止をしてしまった。
この滝を越えたらいよいよ滝の瀬十三丁である。
このすばらしさは文章で云々できないので、写真を見てほしい。
ともかくクワウンナイ沢はすばらしい、他にいいようがない。

沢登のフィナーレはなんかさみしい。あんなに激しかった流れが次第に細くなって、ついには生い茂る植物群の中に消えてしまう。
なんか、さっきまで沢の徒渉を繰り返し、滝を高巻いたりしていたのが遠い夢のようである。
稜線に出る直前にガスに巻かれた。その中を歩いていくとカチッ、カチッという音がする。これはもしかしたら「ナキウサギ」の声なのではないかと霧の中をみまわしたら、偶然にも岩の上にナキウサギをみることができた。感激。
縦走路に着いたのは1時半くらいであった。けっこう時間がかかってしまった。
ここからは、今日のテント場のヒサゴ沼とは反対方向に向かう。トムラウシを登るのだ。
トムラウシの手前には大きな沼があった。北沼である。
これも霧の中で、その横を通ってトムラウシ山頂に向かう。大きな岩が重なる中の急な登りであった。
トムラウシ山頂はやはり霧の中で、展望はきかなかった。
山頂から来た道を引き返して、クワウンナイ分岐からさらに進むとヒサゴ沼である。
テントは張らずに、避難小屋に泊った。



登山口からすぐに徒渉の連続



行く手に岩峰が見えてくる






沢は広くなったり狭くなったり



今回使用したテント



岩魚止めの滝



滝を越えるといよいよ滝の瀬十三丁



滑床を水が流れる






岩魚止め滝のうえ





右 岩魚止めの滝
下左 滝の瀬十三丁
下右 滑滝、これを登っていく


←所々で滝になる

下流を振り返る→
←滝が2つ流れ込む

クワウンナイ沢に流れ込む滝、これも滑滝になっている→

←やや傾斜のある滑滝、これを直登する

滝の瀬十三丁は2キロ以上も滑が続く→

←ようやく沢の滑が終わった

オーバーハングの滝→

沢もようやく狭まってくる

←沢も終わりに近づいているが滝が現れた

沢の最後の滑滝→

水も流れなくなった、稜線は近い

←ナキウサギを見た

稜線に登りついた、バンザイ→

←北沼、ここからトムラウシの登りになる

トムラウシ山頂→

←北沼からトムラウシ山頂を振り返る

ヒサゴ沼への縦走路を行く→

 

ヒサゴ沼避難小屋



ヒサゴ沼


一面黄色の花が咲いていた

812

今日はヒサゴ沼から五色岳、忠別岳、平岳と縦走して白雲岳避難小屋まで行くつもりである。今日の歩行は6時間40分の予定。気は楽である。
小屋を出発したときは晴れていた。
小屋の前から真っ直ぐ化雲岳を目指して登って行く。ヒサゴ沼から化雲岳は近い。
化雲岳はなんか稜線の真中に、大きな岩がぽつんと置き去りにされたようになっていて、これを山頂といっていいのか少し悩んでしまう。
この岩の上に登ると、けっこう展望は開けて、トムラウシとか夕張岳が見渡せた。
化雲岳からは東に向かい、五色岳で直角に曲がって北を目指す。五色岳のあたりには沼があり、その周りに咲く高山植物がきれいであった。
大雪山に向かう縦走路をのんびり歩いて行くと、途中の忠別岳のあたりで雨になってしまった。ガスの中の縦走となってしまった。晴れていたら行く手には大雪山が聳え、振り返ればトムラウシとうすばらしい景色が広がっているはずなのに、ただ黙々と傘をさして歩くだけという、ほとんどみじめな山行になってしまった。
この縦走コースはけっこう楽しみにしていたのに。
…くやしい。


化雲岳山頂
遠くから見ると大きな岩がポツンとある。これが化雲岳山頂だ
←トムラウシを振り返る

夕張岳が見える→

化雲岳山頂からの景観
縦走路から下を見ると池塘群が
←忠別岳山頂。雨で傘をさして歩いた

登山道の脇に咲いていたエゾカンゾウ→



トムラウシ

右奥がニペソツ


813

朝、快晴であった。
昨日の雨はいったいなんだったんだと叫びたくなるほどいい天気。

石狩岳、ニペソツ、すばらしい大パノラマである。縦走路を振り返ると遥か向こうにトムラウシが聳えている。この景色を見れただけでも、昨日の雨の苦労は報われたというもの。
白雲岳によって、ここからも大パノラマをゆっくりと眺めて、大雪山の北海岳の登りにとりかかる。
北海岳以降の道は、つい1ヶ月前に黒岳から旭岳に縦走したときに通ったばかりである。
間宮岳からは旭岳に登らずにそのまま北上して中岳方向に向かい、その手前の分岐から裾合平に下った。別に旭岳の急登を逃げたわけじゃなくて、通ったことのない道を下りたかったのだ。
下山を始めて少し行ったら、登山道の脇に温泉があった。
脱衣場とかの施設はまったくなくて、道端にある小さな池とかわらない。登山者がすぐ側を通るということを思うと、この温泉に入るにはちょっと勇気が必要だ。
裾合平から姿見池のロープウェイ駅までは1時間足らずで着いた。
姿見池から山を振り返ると、山の斜面から噴煙が上がっている。
大雪山も活火山なのだ。

ロープウェイ駅には12時に着いた。

今回のトムラウシから大雪山の縦走は無事終わったが、夏休みはまだ日が残っている。
どうしようかと考えたが、北海道にある百名山の最後に残った後方羊蹄山を登ってしまうことにした。
そうと決まったら、時間を節約するためにロープウェイで下り、バスで旭川へ出て、そこからまたバスに乗り換えて、天人峡温泉に。
今日は晴れていたのだが、突然にわか雨。日は照っているのに雨が降っている。その中で羽衣の滝を見物して、停めてあった車にたどり着いた。
後方羊蹄山に行くことにしたものの、よく地図を見たら、かなり遠い。
旭川から深川、札幌の北を通って、小樽、余市、そこから定山渓に入って、中山峠を越え、ニセコを抜けてようやく比羅夫の登山口である。
登山口に着いたときはもう、真っ暗であった。


白雲岳避難小屋


トムラウシが見える


白雲岳避難小屋を振り返る





白雲岳山頂

山頂から大雪山方面を望む


大雪山御鉢平

旭岳、今回は登らなかった


大雪稜線から裾合平への分岐

裾合平を行く

ロープウェイで下った

突然、にわか雨



ニペソツ山


チングルマの群落





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