2003/10/13

標高 2899m

小屋を出発するときはすさまじい風と雨であった。
しかし、横岳から赤石岳を展望するときだけ、幸運にも晴れてくれた。
八ヶ岳主峰赤岳


冬山入門 八ヶ岳
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20031013


5時に起床。
昨日のテレビの天気予報では、午前中は雨、午後から天気は回復してくるらしい。
今日も雨の中を行くのかと思うと気が重い。
小屋の中にいても、ゴウゴウと荒れ狂う風の音が聞こえる。ビビッてしまう。
これから今回のコース一番の難所、横岳の岩稜を越えなければいけないのだ。そしてさらに、赤岳山頂からはこれまたすごい岩場の道を権現岳まで縦走しなければいけない。
なんかパスしてしまいたくなる。本気で、赤岳からは阿弥陀岳に縦走して行者小屋に降りてそのまま帰ろうかとも思ってしまった。
ともかく赤岳山頂をめざす。
外に出ると、予想以上のすさまじい風である。、まだ薄暗い。
外には私一人であった。
小屋からすぐに稜線に出る。右から風が吹き付ける。
ステッキをフルに活用して、体を支えながら進んでいく。少し油断すると、風で体が飛ばされてしまうのだ。なんどか転ばされてしまった。
この強風の中、横岳を登らなければいけないのかと思うと恐くなってしまう。よっぽど小屋に引き返そうかと思ってしまった。(この日、東京では集中豪雨があって、中央線の高尾〜大月間は不通になり、茨城県では強風で巨大クレーンが倒れ死傷者が出ていたのだ。ともかく各地ですごい被害をもたらしていたのである。)
霧が少し晴れたら、私の前を2人の登山者が歩いているのが見えた。仲間がいると思ったら少し気が軽くなった。
小屋から30分ほど登ったところで、奇跡的に下界の方の雲が晴れた。
東の清里方面がきれいいに紅葉しているのが見える。
すごい、この嵐の中、下界は晴れているようなのだ。さらに登っていると、西の甲府方面の視界も広がってきた。吹き飛ぶ雲の合間にこれから登る稜線に鋭く切り立った岩峰が見えた。大同心である。
嵐の中で見るだけにすごい迫力である。
写真を撮ろうとして顔を上げた瞬間、あっという間に帽子が飛ばされて空のかなたに消えてしまった。十分気をつけていたのに。
横岳の岩場の登りにさしかかる。この頃になったら、少し風が弱くなってきたような気がする。
横岳はいくつもの岩峰からなっている。
まず、目指すのは主峰横岳である。まず清里側に少し下って、それから岩場を鎖にすがって登る。登りきったところが横岳山頂である。
ここで、雲がどんどん流されて視界が開けてきた。みるみる青空が広がっていく。
行く手の赤岳にかかる雲が吹き流されて行く。
あれよあれよというまに、赤岳が現れてきた。
すごい。さっきに嵐はいったいなんだったのだと思うし、天気予報というのは本当にあてにならないと思ってしまった。
ともかく、赤岳が朝日を浴びて、山襞を濃い陰影をつけ聳えている。真っ青な青空を背景にいかにも主峰らしく、堂々と聳えている。
赤岳から右に目をやると、阿弥陀岳が赤岳に劣らぬ風格で聳えている。
もう、この景色を見ることができただけで、さっきまで強風の中這いずるようにして登ってきた苦労がすべて報われた感じである。
強い風の中、横岳山頂でしばらくこの絶景に見とれたいた。
横岳の岩峰群はこれからが本番なのである。
まず細い稜線を行ってたどり着くのが三又峰。ここから清里側に下って行く道がある(そま添尾根)。ここから稜線から外れて急な岩場を諏訪側に下る。もう一度稜線にもどってのピークが石尊峰、再び諏訪側に下って、鉾岳・日の出岳とピークを巻いて、最後の岩峰二十三夜峰を過ぎると地蔵尾根の分岐に着く。
ここから行者小屋に下る道があるのだが、のぞいてみるとすごい岩場の急な下りである。
昔、私が始めて冬の八ヶ岳にきたとき、横岳の縦走は危ないと思ったので、この地蔵尾根を登って赤岳をめざした。横岳縦走より、この地蔵尾根のほうがはるかに危険な道であった。素人は恐い。
地蔵尾根分岐には石仏が置かれている。
振り返ると、今通過してきた横岳の岩峰群がすごい。その向こうには平らな山頂の硫黄岳があって、さらにその向こうに2つのピークをもつ天狗岳が見える。
天気がいいと、本当にうれしくなってしまう。
地蔵尾根の分岐から赤石山荘に向かう。
この間は強風地帯である。朝に比べたらだいぶ弱まっているのだが、それでもけっこう風は強い。赤石山荘では休憩することなく通過。
ここからいよいよ赤石岳への急登が始まる。
再び強風地帯に入る。
空には雲が出てきて赤石岳は霧に包まれてしまった。
強風である。赤石山荘から出てきた登山者は、あまりの強風にたじろいでいて、風をやり過ごすためにしゃがみこんでしまったりしていた。
ともかく、山頂を目指す。
頂上直下は鎖を手繰っての急登になった。赤岳ってこんなにきつい登りだったっけと思ってしまった。
山頂にようやく着いた。霧の中である。さっきはあんなに晴れていたのに、本当に山の天気は変わりやすい。
山頂で記念写真を撮って、権現岳方面に下る。
岩場の急な下りである。すぐに分岐があって、権現岳に向かう道と文三郎道に分かれるのだが、他の登山者はみんな文三郎の方へ行ってしまう。私だけが権現岳に向かう道に入った。なんか寂しくなってしまうではないか。
ここからはすごい悪場の連続である。急な岩礫の道を下って行く。ザレていて少し油断したら落石を起こしそうである。
キレットまでこんな道が延々と続くのだ。
この道を歩いていて気がついたのだが、このコースは後立山の五龍岳から鹿島槍に続く縦走路に似ている。私は去年の9月に後立山縦走をしたのだが、そのとき印象が違うと思ったりしたのは、この権現岳に向かう道と混同していたからなのだ。
つくづく似ていると思うのは、向かう権現岳もピークが二つある双耳峰だし、鞍部にはキレットがあって、同じくキレット小屋があるのだ。急峻な岩場を行くのも同じである
雲が途切れて、キレットが見えてくる。小屋が見えるのだが、はるか下である。あんなに下らなければいけないのかと思うと、
そして、権現岳には下った分と同じだけ登り返さなければいけないのだ。
権現岳にかかっていた雲がとれてくる。でも天気は小雨である。
キレット小屋の少し手前で、20人くらいの団体を追い抜いた。ガイドがついていて、雨具を着るように指示をしていた。
キレットのあたりから振り返ると、隣の尾根に槍の穂先のようなピークが二つ見える。これが大天狗、小天狗の岩峰であった。
キレット小屋は休業中であった。ここで休憩。パンをかじりながら大天狗の岩峰を仰ぐ。
南八ヶ岳はすごいと思ってしまう。
しかし、ここから権現への登りもすごいのだ。
岩尾根を急登して行く。1時間ほど登ると傾斜が緩やかになって、行く手に雲にかすむピークが見える。ようやく山頂かと思って歩いていくと、道はそのピークを巻いて続いている。山頂には標識が立っているのも見えたので、ともかく強引にこのピークに登ってみた。
標識には旭岳と書かれていた。旭岳というのは権現のかなり手前にあるピークである。
指導標があって、権現まで1時間と書かれていた。まだ1時間も登らなければいけないのかと思うとどっと疲れが押し寄せてきた。
雨が少し強くなってきた。
傾斜はないのだが、岩峰を縫っていく。山頂直下ですさまじく長い鉄梯子がかかっていた。この記憶は残っていて、これを登ったら山頂は近いはずである。
とはいえ、この梯子、半端じゃなく長い。途中で息を継がなければいけなかった。それに怖さもわいてくる。
やっとこの梯子を越えると山頂が見える。たどりついたピークは山頂ではなくて、分岐である。
左に雲に霞む巨岩の重なるピークが見える。これが権現岳山頂である。
雨が強くなってきて、その雨が降りしきる中を5分ほど歩くと山頂の直下である。
大きな岩が聳えていて、ともかくピークまで行って見ることにした。
てっぺんには宝剣が立っていて、その横に「権現岳」と書かれた指導標が立っていた。
ともかくこの指導標にタッチして山頂に登ったことにする。
宝剣にも触ろうと思っただが、なにかしら変な音を発している。これは雷の電気が蓄積されている音ではないか。
やばいので止めた。(止めてよかった。権現からの下りで雷が鳴り出したのだから)
分岐にもどってくると、そのすぐ下に小屋が見えた。さっきは霧が濃くて小屋が見えなかったのだ。小屋の前を通ってもう一つのピークをめざす。
指導標がはっきりしないのだが、ともかくノロシバに登って、ここで登山道は二つに分かれるのだが、私は編み笠山をめざす。
急な下りである。
小雨の中、どんどん下って行く。
1時間ほど下って、行く手にこんもりとした丸い山が見えてきた。その手前には小屋が見える。これが編笠山であった。編み笠山は巨岩が累々と重なる山である。あれを越えて山頂に行かなければいけないのだ。
手前にある小屋は「青年小屋」である。
ここで休憩することにした。
12時を過ぎた頃ななので、ここで食事をすることにした。
小屋でカレーを注文して食べた。やっぱりアルファ米とは違って、本当のご飯はうまい。
外では雷が鳴っている。この雷の中を編み笠山に登るのは、ちょっとひるんでしまう。
雷が落ちてきたらどうしようかと思ってしまうのだ。
食事を終えて外に出ると、雨はだいぶ弱まっていた。ここまで来て最後の山頂を踏まないのも悔しいので、予定通り山頂を目指す。
巨岩を渡っていく。岩にペンキで丸印が書かれているので、これをたどって行く。
ようやく樹林の間の道になるが、道は岩場のままである。
1時間登ってようやく山頂である。
このころになると雨も上がって、雲がきれて下界の山並みが見えるようになってきた。紅葉がきれいである。
編み笠山は岩が敷き詰められた広い山頂である。
ここで下山路がよくわからない。
登ってきた道の直線方向にも下山路があって、この表示は比較的あたらしい。
しかし、なんか地図と照らし合わせると違うようだ。登ってきた道から左折する方向にも下山路がある。そこに指導標がたっていたが、この指示板が折れていて、観音平の矢印が下をむいていた。これを折れ口を合わせて復元して見ると、観音平はこの左折する道だとわかった。
この道を下る。
この下りは長かった。かなり急な道を下って行くのだが、ところどころ岩が道を塞いでいる。こんなのを越えたりしているとけっこう時間がかかってしまう。
ようやく、編み笠山の巻き道と合流したのは1時間ほど下ってからであった。
この合流点は「押手川」という看板が立っていた。
川なんか流れていないのだが。ここで雨具の上着を脱いで普通のシャツに着替えた。雨は上がって、空が明るくなってきている。
ここから傾斜はかな緩やかになる。
しかし所々、道には大きな岩があったりで歩きにくい道である。
樹林の中の道を行くが、紅葉がきれいでけっこう楽しく下っていくことができた。
観音平直前で道が分からなくなった。分岐があってその案内がないのだ。まっすぐ行く道はそれなりに広い道なのだが、草が生えていてあまり人が通っていないようだ。右に曲がっていく道は、地図からみると方向がずれて行くようで心配である。
悩んでいたら、さっき追い越した10人くらいのグループがやってきた。訊いてみると駐車場は右だという。駐車場が観音平だろうかと思ってこちらの道を行くと、すぐに駐車場に出た。ここが観音平であった。
大きなバスが停まっていて、団体を待っているようである。もしかしたら、キレット小屋のあたりで追い抜いた団体だろうか。
さて、ここから小淵沢までは8kmの道のりである。ここでタクシーを呼んでもいいのだが、せっかくなので最後まで歩こうと思う。
ところが、ここで小淵沢に下っていく登山道がわからない。
指導標があるのだが、その方向にはヒカリ苔と書かれた案内があって、これが小淵沢に行く道なのかどうかよく分からない。
10分ほどウロウロしてようやく小淵沢の指導標をみつけた。
樹林の中を下る。ヒカリ苔の洞窟の前を通る。中を覗いてみたが、どれが光ってるのかよくわからなかった。昔、北海道でみたヒカリ苔は本当に輝くように光っていたけど。
樹林の中から、一直線に切り開かれた広い道に出た。
10mくらいの幅で木がなくて、それが真っ直ぐに下に続いている。
昔歩いたときこんな道があったけ、と思ったが、ともかく指導標に従ってこの道をどんどん下って行く。ただ、地図と照らし合わせると、なんか違うような気がする。ただし、私が持ってきているガイドブックは昭和51年版で、いまから28年前のもである。
どんどん下って行くと舗装道路を横切り、さらに下ると突き当たりになって、道は直角に右に曲がる。少し登りになって、これを行くと右手に八ヶ岳の裾野が紅葉に染まって広がっているのが見えた。地図では一直線に小淵沢に下るはずなのにおかしい。
…と思っていたら、舗装道路にぶつかった。この道が地図に書かれている道である。私はずいぶん東側を下っていたのだ。
この道路に出る前に、雨具のズボンも穿き替えた。空はすっかり晴れて、青空が広がっている。編み笠山もきれいに見えた。
ここから、舗装の道を一直線に下る。途中棒道を横切る。この棒道は武田信玄が軍事用に造った道なのだそうだ。
小淵沢に着いたのは5時であった。
最後はほとんど足を引きずるようにして歩いていた。疲れた。

あとはJRに乗って帰るだけだったのだが、小淵沢の切符売り場は異様に長い行列が出来ていた。不思議に思ったら、なんでも中央線の大月〜高尾間が不通になっていたらしくて、ダイヤがめちゃくちゃに乱れていたのだ。
塩尻から特急しなのに乗るつもりだったのだが、これは2時間遅れになっているらしい。
山の上に居て気がつかなかったのだが、下界ではとんでもない集中豪雨が起きていたのだ。
また茨城県では強風で巨大なクレーンが倒れて、死傷事故も起きていたのだ。

塩尻で1時間ほど特急を待って、名古屋からは新幹線のぞみに乗って帰ってきた。家に着いたのは12時近かった。




硫黄岳石室


大同心が見えた


下界は晴れている


横岳山頂


横岳の岩稜を行く


地蔵尾根分岐


赤岳が目の前に


阿弥陀岳に朝日が射す


赤岳山荘と赤岳


赤岳頂上小屋


赤岳山頂


文三郎尾根との分岐


梯子で岩場を下る


行く手に聳える権現岳


小天狗と大天狗


キレット小屋


大天狗と小天狗


富士山が見える


山頂直下、長い梯子を登る


権現岳山頂


権現小屋


編笠山、手前に青年小屋が見える


青年小屋


編笠山山頂


押手川


観音平


編笠山を振り返る


小淵沢駅






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